蹄病
牛の蹄病は乳牛、役肉牛、肥育牛など、用役や品種によって病態に差異がありますが、いずれも角質部および知覚部に傷害が生じているものが多く、また管理上の失宜や削蹄の遅延が重要な誘因となっています。
放牧牛では踏創が多く見られ、舎飼の牛には趾間皮膚炎や蹄底潰瘍がおおい。
また過長蹄では蹄尖壁の亀裂、化膿、蹄踵部の切創、趾間部の挫跖、蹄血斑などが少なくありません。
趾間フレグモーネ
趾間腐爛あるいは腐蹄病(footrot)として古くから知られた趾間の皮膚領域の病気は多年の研究の結果、趾間フレグモーネと趾間皮膚炎に区別されるようになりました。
趾間フレグモーネは趾間部の皮下に細菌が侵入して起こす急性の炎症で、皮下織の化膿と壊死が著しい。
症例の発生は散発的で、草地の手入れが不良で切株が多くまたぬかるむ放牧地や、放牧地へ至る砕石の多い道路などを歩いて、趾間の皮膚に損傷が生じやすい地域では発症がおおいため、放牧型腐蹄病pasture footrotとも呼ばれます。
ただフリーストール飼育の牛群に集団的に発生した例が知られていますが、繋ぎ飼育の牛では時々発見されるにとどまる。
趾間の皮膚に生じた小さい損傷からFusobacterium necrophorum(壊死桿菌)が侵入して発病しますが、Bacteroides melaninogenicusの重複感染も報告されています。
F.necrophorumは牛の消化管内や糞便中に常在しています。
ふつうは1肢に単発的に発現します。前肢のことも後肢のこともあります。
趾間の皮膚および蹄冠から繋の背面および繋凹部にかけて著しい発赤と腫脹が現れ、それらが時には球節にまで広がります。
疼痛が顕著で、跛行が突発します。佇立している時には蹄を浮かせ、少し前方に出して蹄尖を軽く地に着け、あるいは足踏みのように趾端を軽く上げ下げします。
発熱、食欲減退などの全身症状も現れます。
早期の治療が奏効しないと趾間の皮膚が自潰して創口が開き、壊死組織と膿が排出され、またそこが肉芽組織で埋められる。強い悪臭がある。
時にはそれらの病変が趾間隙の背側端または底側端を越えて、蹄冠の背面または蹄球に拡がることもあります。
また病勢が劇しい場合には、炎症が深く潜入して蹄関節、舠嚢、屈腱鞘、蹄骨などに壊死と化膿がひろがり、いわゆる深部感染症deep digital sepsisに発展することがあります。
本病の治療法として急性期には抗生物質その他の化学療法剤を非経口的に投与します。これが奏効すれば1~2日以内に炎症と跛行が急速に消褪して、趾間隙の皮膚の破壊は免れます。
すでに皮膚組織の崩壊が起っている場合には抗生物質の効果は小さく、外科的感染症に対する一般のルールに従って処置します。罨法と休養が推奨されます。
定期的なホルマリン蹄浴、年に1~2回の牛舎の大掃除、フリーストールごとに約3kgの農業用消石灰を床に散布することなどが、本病の予防に効果的です。

