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ウシバエ(cattle warble-flies) ~ 形態・発育および習性・害・防除

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ウシバエ 家畜害虫

 
 
ウシバエの成虫は主として、牛、時には馬を襲うハエで、幼虫は宿主の体内を移行して最終的には背部皮下に寄生します。
 
 
この幼虫によるこぶのことをcattle grubといっています。牛はウシバエ幼虫の寄生によって皮膚は損傷をうけ、皮革としての損害は莫大な金額に達します。
 
 
また、人への感染も報告されています。
 
 
ウシバエ属Hypodermaには数種の種類がありますが、とくに問題となるものはウシバエHypoderma bovisとキスジウシバエH.lineatumの2種類です。
 
 

ウシバエの種類および分類上の位置

 
 
双翅目:Diptera
短角亜目:Brachycera
ウシバエ科:Oestridae
ウシバエ亜科:Hypoderminae
ウシバエ:Hypoderma bovis
キスジウシバエ:H.lineatum
 
 

ウシバエの形態

 
 
成虫の形態は両種ともミツバチに似ていて、大形、有毛のハエで、ウマバエのように口器は退化しています。翅は1対あってよく発達しています。
 
 
ウシバエとキスジウシバエは似た形をしていますが、ウシバエの成虫はキスジウシバエより大きく、頑丈で、体には全般的に黒色と黄白色の毛があって、後半は黒色の毛が生えていてその境はほぼ一直線をなしています。
 
 
腹部の先端は黄色です。翅脈は赤褐色で脚の毛は黒および黄色です。
 
 
キスジウシバエは全般的に黒っぽく、黄色あるいは褐色の毛の縞があります。胸部の背面は黒色、白色ですが、その他の部分は黄色の毛が生えています。
 
 
腹部の前方は灰色-黄色、中央は黒色、後方は橙黄色の毛が生えています。翅はすこしくすんでいて、暗褐色または黒色です。
 
 
脚は黒および褐色の毛でおおわれています。
 
 
卵は1mm弱の大きさで柄をもっています。幼虫の各節には棘があり、乳白色ないし黄白色をしています。しかし、3齢幼虫は成熟すると黄褐色となり、さらに暗褐色になります。蛹は黒くて頑丈です。
 
 

ウシバエの発育および習性

 
 
ウシバエ、キスジバエの固有宿主は牛ですが、馬や人に寄生することもあります。
 
 
人の体内では幼虫は成熟せず、しかも多くはキスジウシバエの幼虫が寄生するといわれています。両種とも、成虫は太陽が輝き、おだやかな晴天の日中に活動します。
 
 
とくに気温が18℃以上の高温に飛来しますが、雨天のときや29℃以上の高温のときは活動しません。また、成虫の活動時期はウシバエでは6月中旬から8月下旬、時には9月にもおよぶ夏期です。
 
 
キスジウシバエの成虫はウシバエより約1ヶ月早く活動を始め、6月下旬までいますが夏には珍しい。
 
 
成虫は蛹から羽化すると飛びながらただちに交尾をし、羽化後第1日から牛の後肢、前胸、下腹、腰などの被毛に産卵し、産卵が終わると羽化後3~4日で死んでしまいます。
 
 
成虫の活動範囲は数kmといわれていますが、その間に餌はとりません。また、成虫は水中に立っている牛は襲いません。
 
 
ウシバエは牛の体の周囲を飛びまわっては産卵しますが、その際牛に苦痛を与え1本の毛に1個の卵を産みつけます。
 
 
しかし、キスジウシバエは牛にあまり苦痛を与えないで1本の毛に5~10個の卵をならべて産み、1匹の雌は1頭の牛に100個あるいはそれ以上の卵を産みつけます。
 
 
牛の被毛に産みつけられた卵は約4日たつとふ化して1齢幼虫となり、毛を下がって皮膚に達し、皮膚に小さな孔をあけて侵入します。
 
 
皮膚の中に入った幼虫は体内移行をして約9ヶ月後に背部皮下に達しますが、次のように異なっています。
 
 

ウシバエ

 

皮膚侵入 → 神経に沿って → 脊椎管(約4ヶ月) → 脊椎周辺の筋肉、脂肪組織 → 背部皮下

 
 

キスジウシバエ

 

皮膚侵入 → 胸腔、腹腔(約4週間) → 食道壁あるいはその付近の皮下組織 → 背部皮下

 
 
1齢幼虫はウシバエ、キスジウシバエとも肩から腰にかけて背中線の両側の背部皮下に到達すると、皮膚に小孔をあけ、脱皮して2齢幼虫になります。
 
 
宿主側からは防禦反応によって結合組織の袋ができ、その袋の中に幼虫はおさまり、さらに脱皮して3齢幼虫になります。
 
 
外面からみると背部はこぶ状にみえます。
 
 
この背部の腫瘤はウシバエ幼虫症の典型的な症状です。3齢幼虫での期間はウシバエでは約11週間、キスジウシバエでは7~8週間です。
 
 
幼虫は皮下の袋の中で水平に近い状態で寄生し、体の後方気門板が開口部の近くにあるように位置しています。
 
 
背部皮下で成熟した黒褐色になった3齢幼虫は、皮膚から脱出して地上に落ちて蛹になります。宿主からの脱出はおもに昼間に行なわれ、数週間にもおよびます。
 
 
蛹はやがて羽化しますが、ウシバエの蛹期間は24~70日、キスジウシバエは17~44日です。ウシバエの発生は年1回で幼虫期間が長い。
 
 
キスジウシバエを例にとり、この生態をまとめるとおよそ次のようになります。
 
 

5月下旬~6月
 
成虫は羽化し、交尾して牛の毛に産卵、牛はそれをさけるため狂奔。
 
7月~8月
 
毛の上で卵はふ化し、1齢幼虫は皮膚侵入。
 
9~11月
 
1齢幼虫は牛の組織内を移動。
 
12月~2月
 
食道その他の組織中に1齢幼虫がいます。やがて背部に移動し、こぶをつくり2齢、3齢幼虫になります。
 
3月~5月
 
3月中旬成熟幼虫は背部のこぶから脱出し、地上に落ちて蛹になります。成虫は5月に出現します。
 
ウシバエの発育はキスジウシバエに比べて約1ヶ月ずれています。

 
 
ウシバエはアジア、ヨーロッパ、北米、カナダなど北半球の各地に発生します。蛹は一般に寒さに強いが、高温、高湿の場合には死にやすい。
 
 
日本では輸入牛以外ではウシバエはいないといわれていましたが、近年日本で生産された牛からも幼虫が発見されています。
 
 

ウシバエの害

 
 

成虫による害

 

成虫が産卵のため牛の周囲に飛来すると、牛は恐怖感をおび、狂奔したり、水にとびこんだりして、不安状態になり草をたべなくなります。
 
その結果、牛の増体量は減じ、乳牛では泌乳量が減少し、興奮のため妊娠している牛は流産することがあります。

 
 

幼虫による害

 

牛の毛の上でふ化した1齢幼虫が、皮膚の中に侵入して体内を移動するとき、牛はひどく刺激をおぼえて苦痛を感じます。
 
体内に寄生した幼虫は寄生部位の組織の壊死をおこさせ、また脊椎に幼虫が迷入すると、牛は運動障害を起こすことがあります。
 
さらに体内で幼虫が死ぬと牛はアレルギー反応を起こします。

 
 

経済的な害

 

ウシバエによる害のうちもっとも大きいものは経済的損失です。
 
幼虫が牛の背部に孔をあけてこぶをつくると、その部位は皮革としたとき使用価値がなくなり、皮革業者の損害は大きい。
 
また、寄生部位周辺の筋肉は食用に供することができなくなります。
 
最近外国から成牛の輸入がますます盛んになり、飛行機や船によって多数の牛が日本に入ってきています。
 
輸入の際検疫を厳重にして、ウシバエを常在させないようにしなければなりません。

 
 

ウシバエの防除

 
 
ウシバエの産卵を防止するため牛を水中に避難させる。さらに、忌避剤を牛の体表に散布してウシバエの飛来を防止します。
 
 
しかし、有効で実用的な忌避剤はほとんどありません。
 
 
牛の体内に侵入した初期の幼虫を殺すには浸透性殺虫剤を用います。浸透性殺虫剤の応用は多くの報告があり、経口投与、体表処理、注射などを実施しています。
 
 
牛の背部へ寄生し、こぶをつくっている3齢幼虫を手指で圧出するか、手術によって摘出します。さらに、浸透性殺虫剤の経口投与、体表処理、薬浴、注射などによって3齢幼虫を殺すことも有効です。

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