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家畜における中毒療法 ~ 原因療法

家畜における中毒療法 ~ 原因療法 家畜中毒

 
 

毒物除去法

 
 
これに属するものは受容した毒物を器械的に排除するもので吐剤、胃洗浄、下剤、利尿剤、瀉血、発汗などがあります。
 
 

吐剤

 

中毒の極初期には極めて有効ですが、家畜では犬、猫、豚以外は不可能です。
 
若し吐剤のない場合は、犬に食塩または芥子紛1~2サジを茶サジ1杯の微温湯に入れて与えるか、あるいは口を開けて咽頭部をゴム管、羽根などで軽く刺戟させることも試むべきです。

 
 

胃洗浄

 

吐剤と同じく初期ほど有効ですが、家畜では困難な場合が多い。
 
洗浄液は毒物に適応した解毒剤を用い、これに吸着剤を併用することが合理的です。但し、胃洗浄は腐蝕毒に対しては胃の穿孔を招く惧があって禁忌です。

 
 

下剤

 

犬、猫、豚に対し効果が著明で、反芻獣や馬には比較的長時間を要することならびに虚脱の恐れがあるものには禁忌です。
 
薬剤としては作用の速い峻下剤がよいが、油類下剤は往々毒物の溶解吸収を容易にする惧があります。
 
例えば燐(猫イラズ)は脂油に溶けて吸収を容易にするものです。
 
塩類下剤はこの点安心ですが、緩下剤であるから作用時間が遅く大量を要する欠点があり、昇汞は食塩によって溶解吸収がよくなるので、この中毒には塩類下剤は禁忌です。
 
しかし他面には腸蠕動を亢進し、腸液の分泌を高め毒物の排泄を促す利点もあるので、要は毒物の性質と家畜の状態に応じて活用すべきものです。
 
巴豆油はヒマシ油と混ぜて与え塩類下剤は大量の水に溶解して5%位の溶液となるようにしないと効果がありません。

 
 

浣腸

 

この効果は大動物よりも小動物に対して著しく、特に中毒後相当の時間を経過したものには必ず浣腸を試みるべきで、この際は単なる浣腸液よりも毒物に適応した解毒薬と吸着剤を併用するのがよい。
 
また中毒症の浣腸は宿糞や毒物を排泄するというのではなく、毒物を無害にするという考えであるから、薬液をなるべく永く腸内に残留するよう注腸の心がまえでなすべきことが肝要です。
 
大動物に対しては以上の着眼で、なるべく大量(時には20ℓ位)を用いる必要があります。

 
 

利尿剤

 

毒物の排泄は糞の他、尿によることも少なくない。
 
特に水溶性の毒物は速やかに排泄するものです。従ってカフェイン、テオブロミン剤、塩類利尿剤(酢酸カリウム水、硝酸カリウム、重酒石酸カリウムなど)
 
またはウロトロピン剤、水銀剤などの応用と同時に経口、皮下、静注ならびに直腸より生理食塩液、リンゲル液、ロック液などの注入を行うべきです。
 
ただし、毒物(テルペン油、燐、水銀剤、揮発油、カンタリジン、サルチル酸など)によって腎臓を強く刺戟する薬剤およびネフローゼのあるものには食塩の投与を慎むべきです。
 
(1)生理食塩水-食塩8~9gを蒸留水1000ccに溶解濾過し滅菌して用いる。
 
 
(2)リンゲル液-8.0、食塩塩化カルシウム0.2、塩化カリ0.075、重炭酸ナトリウム0.1gを1000ccの蒸留水に溶解濾過滅菌する。
 
 
(3)ロック液-食塩9.0、塩化カルシウム0.24、塩化カリ0.42、重炭酸ナトリウム0.1、精製ブドウ糖1.0gを1000ccの蒸留水に溶解滅菌。
 
この場合、ブドウ糖の代わりに良質の蜂蜜を代用し得ます。

 
 

瀉血

 

元来瀉血は血中の毒物を稀釈減少し、且つ体外への排泄を速やかにすると共に体内におけるコロイドと塩類との間に物理化学的変化を招き、全身の防御装置に変調を起し毒物に対する新たな抵抗力を賦活せしめるものと解されています。
 
故に瀉血は中毒の初期で未だ心臓が衰えず、しかも毒が血液組織に停滞して血行ならびに腎臓機能が侵されないうちに行なうことが肝要です。
 
瀉血後は血量の約2倍のリンゲル液あるいはロック液を注入します。

 
 

発汗

 

皮膚の皮脂腺、汗腺および唾液腺に排泄する毒物は水銀、ブローム、ヨウ素などで、これらの中毒では発疹や粘膜の炎症を招くほどですが、他の毒物でもこれに準ずるものが少なくない。
 
ただし家畜では発汗の機能が薬物によって強弱があるのでそれに速応した薬物を用いるべきだといわれています。
 
馬などでは温湿布を施したり、または心臓機能が良好ならばピロカルピンのような薬剤を注射し発汗によって毒物を排除すると同時に、各臓器腺(唾液、胃液、腸液、尿、気管枝粘液、乳汁)の分泌を増加させるのがよい。
 
但し中枢神経に対し有害作用をおよぼすことがあるから注意を要します。

 
 

第一胃切開術

 

最近は牛における第一胃切開術が普及して重篤な疾病に対しても極めて有効、安全な結果を示しています。
 
各種中毒症に対してもこの応用は頗る有効で、特に従来ほとんど致命的であった牛の腐敗甘藷中毒や重金属あるいは有機燐剤、フルオロ酢酸系(フラトール)などにも試むべき療法です。
 
しかし、この手術の実施に当たっては患畜の抵抗力と中毒の時間的考慮が大切で、初期ほど良好です。
 
すなわち、他に合併症がなく、元気で心機の衰えぬ場合は躊躇せず直ちに実施すべきです。而してこの場合は普通の第一胃切開時と異なり、毒物を除去する考えでなるべく多量の内容物と液体を去り、同時に適切な解毒薬と吸着剤を併用し、胃内に注入しておくことです。
 
また要すれば術後、套管針を装着しておき、以上の薬液を1日3~4回位注入することもよい。これは毒物が手術によって全部除去されるものでなく、薬物との反応が徐々に行われるためです。
 
従来の報告では腐敗甘藷中毒をはじめ、ウスプルン等はフラトール中毒の和牛に対し救急療法として手術を行い好結果を得ています。

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