鶏のマイコプラズマ病の概要
マイコプラズマ(M)は分類学的に細菌とはことなる一群の微生物です。鶏から分離されるMは9種類知られており、そのうち鶏に病原性を有することが明らかなMは、マイコプラズマ・ガリセプチカム(MG)とマイコプラズマ・シノビエ(MS)です。
MGの病原性はMSに比べて強く甚大な被害をもたらしています。一方、MS感染症は呼吸器あるいは滑膜炎として散発例が認められていますが、被害の実態は明らかではありません。
MG、MSの主な感染部位は気道で、両Mは主に同居感染(水平伝播)により伝播します。感染鶏の気道排泄物の直接的取り込みやMに汚染した物、飼育者、飮水を介して速やかに伝播します。
MGは鶏体外で塵埃、糞、羽毛などに付着して、また飮水中で長時間生残します。MSの鶏群内全体への伝播はMGに比べて速く、短時間に成立します。
産卵鶏にMが感染すると下部気道で増殖し、さらに近接する生殖器へ移行して介卵感染(垂直伝播)の原因となります。このような伝播は次世代のM感染を引き起こし、種鶏群で問題となります。介卵感染の発生率は感染早期に高く、経過とともに低下します。
飼育環境の良好な農場では、鶏がMに感染しても通常不顕性のまま経過します。しかし、種々の病勢増強要因が加わったとき、伝播が促進され症状を発現するものができます。その要因となるのは若齢の非感染鶏と高日齢の感染鶏の混合飼育、高密度の飼育、劣悪な鶏舎内環境(換気や温度管理不良など)、他種の微生物の複合感染(各種ウイルス、伝染性コリーザの原因菌や大腸菌、他種Mなど)などです。
鶏群全体への伝播の速さや発症の程度は上記の要因の程度によって変化します。MGは感染初期には気道全体に定着して病変を形成し、感染鶏は経過とともに免疫を獲得して、通常(前記の病勢増強要因を受けない時)回復傾向を示し、Mは上部気道に限局的に定着して持続的な感染状態となります。
このような鶏は再感染に対して抵抗性を発現します。
鶏のマイコプラズマ病の予防・治療・対策
予防に関しては十分な衛生管理、対策としては、抗生剤の適切な投与を実施、主にマクロライド系或いはテトラサクリン系の抗生物質で治療します。
タイロシン(タイラン)やスピラマイシン、アイブロシン水溶散
鶏マイコプラズマ病の診断と要点
●鶏マイコプラズマ病は2種類のマイコプラズマによる慢性呼吸器病で、希に関節炎をともなう
●産卵鶏では産卵低下、ブロイラーでは気嚢炎による廃棄などによる経済的被害
●通常は不顕性感染、飼育環境の悪化や他の微生物の混合感染により発症し重篤化
●同居感染や介卵感染により伝播
●急速平板凝集反応による抗体検査で鶏群単位の感染状態を調査
●マイコプラズマ・ガリセプチカム感染症ワクチン(生ワクチンと不活化ワクチン)は産卵低下に対し軽減効果を発現
