めん羊における捻転胃虫の感染の多くは夏季の放牧期間に行われ、発病は晩秋から冬季です。発病には栄養状態が関係し、栄養の良くないものは罹患しやすく、牧草の豊富な夏で飼養が良好であると症状は軽い。
発病は幼羊に多く、妊娠、泌乳中の母羊も症状が顕著です。病畜は元気なく、食欲不振となります。捻転胃虫症では重度感染によって甚急性の経過をとるときは症状をみる以前に急死し、急性では激しい貧血と栄養障害から水血症となり、全身性浮腫を生じます。
浮腫は下顎部、前胸部に明らかで、夜間の安静時には軽度となる。慢性経過をとるものは貧血と栄養障害が徐々に進行して削痩し、衰弱し、眼脂を出し、皮膚の栄養は衰え、羊毛の品質は低下します。
捻転胃虫では下痢をみることは少なく、むしろ間歇性の便秘がみられます。貧血は高度で、赤血球数は200万にも減少し、奇形赤血球、塩基性顆粒、その他異常赤血球の多数出現がみられます。
貧血は吸血や失血に原因するものと考えられますが、催貧血性物質の存在も示唆され、また、溶血や骨髄機能抑制などの因子も考慮する必要があります。
白血球数は一般に減少しますが、好中球増加も現れ、好酸球増加も認められます。水血症は秋冬の候に多発するのがふつうです。糞便には多数の虫卵を含むのが特徴で、毎日300万個の虫卵が産出されると計算した人がいます。
本邦でも種羊場や牧場では捻転胃虫症の被害は甚大ですが、農村での数頭のめん羊を舎飼いする飼養方法では、被害はほとんど問題にならない。
オステルターグ胃虫症は第四胃に形成される結節と成虫寄生によって消化器障害が生じ、下痢が持続し、粘膜からの蛋白喪失も加わって低蛋白血症を生じ、栄養障害から削痩します。
オステルターグ胃虫の虫卵は耐寒性が強く、一般に東北、北海道など寒い地方のめん羊に多発する傾向があります。野外では捻転胃虫とオステルターグ胃虫との混合感染がおおく、前者による貧血と、後者による下痢とが合併して症状はかなり複雑な様相を呈します。
牛の胃虫症も放牧された子牛に発生が多いが、牛捻転胃虫の単独寄生による病害は実際には遭遇することは少ない。症状は貧血、栄養障害が特徴です。
オステルターグ胃虫による症状はめん羊の場合と同様で抑うつ、食欲不振となり、消化器障害から水様性下痢が生じ、粘膜からの蛋白喪失も加わって低蛋白血症となり、進行性の削痩、貧血、浮腫が現れます。
野外ではこの両種の胃虫、さらに他の消化管線虫との混合感染により発症する症例がおおい。
反芻獣の胃虫症の予防
毛様線虫類は平均気温10℃以下では3期幼虫まで発育しません。5℃以下では虫卵の発育はまったくおこらない。また幼虫はこの温度では運動しませんが、1年間以上も生存します。
気候変化に対して最も抵抗力のあるのは虫卵と3期幼虫です。乾燥に対する抵抗力は種によって異なり、Trichostrongylus属の幼虫形成卵と3期幼虫は強いが、捻転胃虫の幼虫形成卵は弱く、3期幼虫はかなり強い。
保虫羊を放牧した牧野は1年間は幼虫が生存し、感染の可能性がある危険地とみなさないといけません。ことに捻転胃虫の産卵数はきわめておおく(1匹の雌虫が1日に5,000~10,000の虫卵を産出する)、牧野はたちまち虫卵で汚染されます。
したがって、牧野の汚染を極力防ぐ必要があり、それには定期的に駆虫をおこなうことが必要で、特に冬季に駆虫を行い、保虫羊を入牧させないように努力することは、次の感染期(夏)における感染を予防し、効果があります。
輪環放牧は一般に用いられる予防法です。また、高操の牧野は低湿の地に比較して排水がよく、虫卵および幼虫の生存に適しないので、子羊はなるべく高燥の地に放牧し、これに反し低湿の地は感染の危険はありますが、牧草が良く繁茂するので、発育盛りの幼羊を放つのに適しています。
幼羊は感染の機会がおおくても子羊に比して被害がすくないからです。有病地には少なくとも1年間は反芻獣の放牧を禁止することが理想です。
牧野の耕作も予防に有効であり、耕作は土壌の内部に日光を入射させ、また地表に散在している虫卵や幼虫を地中に埋没して感染の機会を少なくします。また、夜間放牧の禁止も意味があります。
これらの予防法は胃虫以外の線虫による寄生虫症にも応用の価値があり、毛様線虫症および腸結節虫症の混合感染にも効果がおおきい

