肺虫症は幼獣に多発し、反芻獣では牧野疾患として重要です。牛肺虫症は生後4~6ヵ月齢の初感染の幼牛に激しく現れますが、成牛でも既往感染のない免疫状態にない個体では明らかな発症をみます。
病牛は食欲不振、元気減少して削痩、発育不良、貧血など一般状態の悪化がみられます。体温は上昇し、軽度な鼻漏もみられる。
重要な症状は呼吸障害です。進行性に呼吸数の増加があり、浅い速い呼吸が特徴で、呼吸困難が見られます。また、咳も発病の初期から目立つ症状です。
聴診によってラッセル、捻髪音がきかれます。牧野で集中的に多数感染を受けると、激しい急性経過をとり、致死率も高い。感染後の症状の発現と糞便中への幼虫の出現との間に20日以上の差があるので、幼虫が検出されなくても本症を否定することはできない。
めん羊の肺虫症は放牧期間に発生することが多く、秋季には甚だしい。感染後、発症するまでの期間は虫体の多少、個体の抵抗力により差がありますが、糸状肺虫では通常、自然感染後約30日程度で病徴が現れ、幼羊の被害が著しい。
はじめは乾性、強性の咳を発し、後には弱性に変わる。運動後には発咳がとくに顕著となり、粘稠液を喀出し、これに虫卵および幼虫が含まれます。
呼吸は次第に困難となり、聴診すればラッセル、捻髪音がきかれます。病勢は次第に憎悪し、気管支肺炎に変じて死亡するものもある。
二次感染によって肺炎を併発すれば高熱を伴うこともあります。慢性症では栄養が次第に衰え、可視粘膜は蒼白となり、皮膚の弾力性がなくなり、被毛は乾燥し、しばしば下痢を生じ、ついに前胸、下顎に水血性浮腫が現れ、悪液質に陥る。
症状を表す多くの例は消化管線虫症との合併が多く重要な点です。
Goldbergによれば糸状肺虫を実験感染した幼羊の糞便中に幼虫が排出されるのは32~57日後で、平均45日間継続しますが、症状は感染後19日から現れ平均43日間継続するという。
毛細肺虫症も重度寄生では糸状肺虫症と同様の症状を表しますが、虫体も小形で糸状肺虫よりも病害は少ない。発生は6ヶ月齢以下の幼羊にまれにみられ、また、成羊もあまり症状を認めない。
赤色肺虫症も症状は糸状肺虫症に類似しますが、通常は無症状です。多数寄生すれば一般状態の低下と、呼吸器症状が現れ、細菌の二次感染により肺炎を発することもあります。
豚肺虫症は、症状が明らかでないことがおおいが、一般に間歇的な軽いハスキーな咳がみられます。咳は運動によって誘発され増加します。
激しい例では肺炎を生じ、強い咳、呼吸困難がみられ、栄養障害に陥ります。Shopeは豚インフルエンザ病毒は豚肺虫の幼虫によって伝搬されることを証明し、ミミズ体内で32ヶ月間も病毒が生存することを報じました。
馬肺虫症は一般にほとんど認べき病徴がありません。ロバは濃染しますが通常は無症状に経過します。F.osleri感染症は慢性経過をとる乾性の痙攣性咳が特徴で、咳は運動や冷気によって誘発されます。
呼吸困難、食欲不振、削痩も見られます。気管、気管支に形成される結節は、感染後約2ヶ月経過すれば、気管支鏡で観察されます。
F.milksi感染症は一般に症状は軽いが、気管支肺炎から呼吸困難がみられ、聴診でラッセルが認められます。
犬肺虫(F.hirthi)感染症は一般に症状を認めませんが、死亡例も知られています。Filaroides属の感染症の胸部X線検査所見は、F.osleriでは主に気管支分岐部に結節性陰影がみられ、F.milksi、F.hirthiでは肺にびまん性陰影が認められます。
キツネ肺虫症は、気管支炎、気管支肺炎から咳をみますが、急性肺水腫から呼吸頻数、呼吸困難をみることがあります。これはアレルギー反応によるものと考えられています。
好酸球数、白血球数の増加も認められます。
何れの家畜も、肺虫の寄生があっても良好な境遇では病徴は軽度ですが、環境不良や栄養障害によって急に病状が悪化します。たとえば長距離輸送、他の疾患との合併、飼養不適などの場合です。
夏における病畜の輸送にはこの点に留意する必要があります。
肺虫症の予防
肺虫類の生活史が多様であるため、予防法もまた一様ではない。自由生活性の感染幼虫によって感染する牛肺虫、糸状虫、馬肺虫などでは3期感染幼虫の抵抗性が問題となります。
牛肺虫の3期幼虫は4℃でも13ヶ月間生存し、4ヶ月間は高い感染力をもち、10ヶ月まではわずかながら感染力があります。このことは、3期幼虫が2回目の脱皮の際の脱皮鞘を捨てず、しかも黒色の栄養顆粒を腸細胞中に多量にもっているためでしょう。
しかし、3期幼虫は乾燥に対しては弱く、したがって生存期間は夏は短く、秋冬は長い。幼虫は北海道でも越冬可能で、積雪が早く、融雪の遅い冬には幼虫の生存率が高い。
また、敷料踏み込み式牛舎では冬期でも舎内感染が成立します。牛肺虫の感染持続期間は約90日ですが、最高186日にわたって少数の幼虫を排出するものもあります。
牛肺虫の感染が翌年に持ち越される原因として、越冬感染幼虫、舎内感染牛、長期保虫牛などが考えられます。汚染草地の清浄化には、夏期2~3ヶ月間の休牧が有効です。また汚染牧地の更新も有効です。
牧野では幼虫は糞塊から離れることは少ないが、糞塊に生えるPilo-bolus属のカビの胞子嚢にのぼり胞子嚢がはじける時に幼虫も10フィートも跳ね飛ばされて周囲に広がると言われています。
牛肺虫が感染を耐過した牛は後感染に抵抗性を示すので、発症して被害が問題となるのは初放牧の育成牛が殆どです。したがって、初放牧の子牛やめん羊は入牧後に定期的に糞便検査を行い、感染を早期に診断して早期に駆虫を行い、免疫を獲得させて、以後の感染による発症を防止します。
すなわち、予防的駆虫を行います。牧野が感染幼虫で濃厚汚染すると、集中感染による爆発的な発症となり、また、越冬幼虫が翌年の感染源になる可能性がおおきいことから、保虫動物の入牧を阻止し、保虫動物は隔離して、牧野の汚染防止に努めます。

