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糸状虫症に用いられる薬物について

イベルメクチン 駆虫薬

 
 
犬糸状虫症は本邦における多発病の一つですので、その駆虫薬は重要医薬品となっています。使用薬物については虫の発育段階によって異なります。
 
 

成虫駆虫薬

 
 
成虫は右心室に寄生しているので、急激な駆虫は多数の死虫の肺動脈への進入を意味し、危険です。しかし現在用いられている駆虫薬はいずれも選択性の低い薬物で宿主に対する毒性も強く、高い用量を用いることはできず、急速な駆虫は起こらない。
 
 

●メラルソニル(melarsonyl)
 
 
三価ヒ素有機化合物で、筋注か静注で用いる。
 
 
局所刺激性が強いので皮下注射は危険です。薬用量の投与によって平均80%の駆虫率がえられる。ミクロフィラリアや幼虫には無効です。

 
 

ミクロフィラリア(mf,子虫)駆虫薬

 
 
右心室の雌成虫はmfを生んで血中に放出する。
 
 
mfは蚊の吸血によって蚊の体内にはいる。
 
 
成虫が寄生している犬でのmfの駆除は次の二つの理由からです。
 
 
①mfには腎糸球体障害性が推定される。
 
 
②蚊から感染した幼虫を殺滅する薬剤を投与して成虫感染を予防する時、mfを駆除してから使用しないとアナフィラキシーが発症する危険性がある。
 
 

●ジチアザニン(dithiazanine iodide)
 
 
ジチアザニンはシアニン色素で、ヨウ化物は青紫色粉末です。ジチアザニンの薬用量を7日以上にわたって経口投与すると血中のmfが駆除される。
 
 
作用機序は不明ですが、虫体のグルコース取込み抑制が主張されている。ジチアザニン投与によって消化管内寄生虫の多くも駆除されます。
 
 
この薬物の投与中は粘膜や排泄物が青色に染まる。

 
 

その他の薬物

 
 
スチボフェン(stibophen)などの三価アンチモン含有化合物もmf駆除に有効です。ただし、三価アンチモン化合物の毒性は強い。
 
 

予防薬(幼虫駆虫薬)

 
 
蚊に入ったmfは蚊の体内で第三期幼虫(L3)まで成長し、蚊の吸血の時に犬に感染します。
 
 
犬の血液に入ったL3は1日以内に皮下織、筋膜下などに入込み、嚢状の中間発育部位を形成します。中間発育部位の幼虫は約3ヶ月にわたって第五期幼虫(L5)まで成長してから血中に出て成虫になる。成虫は血液中の低酸素部位に寄生し、3ヶ月後にはmfを生み始め、約6年間も生存します。
 
 
糸状虫の病害は主として成虫の寄生によります。したがって犬に感染した幼虫を殺滅できる薬物を、幼虫の感染可能期間を通じて連続投与すれば糸状虫の病害が予防できます。
 
 
用いられる薬剤はイベルメクチンまたはその同効薬の錠剤です。
 
 

●イベルメクチン
 
 
イベルメクチンの小用量を経口投与すると約1週間にわたって幼虫殺滅濃度が維持されます。血中だけでなく、中間発育部位内にも分布し、L4までの幼虫を殺滅します。
 
 
したがって、感染可能期間に1ヶ月に一度ずつ投与していれば、成虫感染を予防できます。
 
 
イベルメクチンでmfを駆除するには幼虫殺滅用量の10倍の用量が必要です。したがって幼虫殺滅用量(予防用量)でアナフィラキシーショックを起こす可能性は低い。

 
 

●ジエチルカルバマジン(diethylcarbamazine,DEC)
 
 
DECを経口投与すると急速に吸収され、3時間後には血中濃度が最高になる。投与後24時間以内に70%が尿中に排泄されます。DECは殺虫効果の強い駆虫薬ですが、幼虫の中間発育部位には分布しない。
 
 
従って血中だけで有効であるから、感染可能期間を通じて毎日1回ずつの投与を続ける必要があります。
 
 
DECは幼虫殺滅用量でmfにも有効です。したがって体内にmfが存在する状態で投与するとアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。

 
 

その他の動物の糸状虫症

 
 
本邦では馬、牛の腹腔寄生糸状虫、靭帯結合織寄生糸状虫(沖縄糸状虫など)、馬・綿山羊の脳脊髄糸状虫症がときに問題となります。
 
 
治療薬としては、ジエチルカルバマジンやアンチモン剤が有効だといわれています。

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