膿皮症
化膿性細菌による皮膚感染症を総称して膿皮症といいます。原発は表皮、毛包(毛嚢)あるいは汗腺などから細菌が侵入したものですが、さらに創傷、熱傷、皮膚炎のような皮膚の傷害から二次性に発するものが多い。
また膿疱および痂皮を主徴とするものを総称して、膿痂疹impetigoという。毛包に感染がおこり、炎症を発した場合、軽度のものを毛嚢(包)炎folliculitisといい、毛包に一致した丘疹および膿疱を生じたものを痤瘡acneと呼ぶ。
またこれらの化膿感染が進行して、毛包および皮脂腺全体におよび、さらに周囲に炎症が波及する場合は、これを癤(せつ)furuncleといい、このせつが多数発生して大きな硬結化膿がおこると、これを癰(よう)carbuncleと呼ぶ。これらはいずれも症候群というべきで、種々な皮膚疾患にみられるものです。
原因菌は主としてブドウ球菌、レンサ球菌で、時に緑膿菌、変形菌、大腸菌なども検出される。
膿皮症は、犬では皮膚の皺襞(口唇、眼瞼、鼻部など)指間皮膚、汗腺、毛包、短毛種の幼令犬(無毛部に)などに好発する。
猫の頸、顔面、膁部など、馬では馬具の下、四肢下部、眼窩、尺骨頸部に、牛では乳房などに稀にみることがある。
膿痂疹としては、豚の接触性伝染性膿痂疹、犬の全身性の伝染病に併発する膿痂疹(犬ジステンパー経過中)があり、その他馬、猫にもみられる。
皮膚は腫脹し、初期には毛の周囲に特に突出部のある円錐形の隆起をつくって硬結し、時に発赤をみとめる。数日で硬結の中央に、壊死に陥った毛包および皮脂腺からなる灰白色ー黄色の膿栓core of boilが形成される。
膿栓の周囲の硬結はやがて軟化し、自潰して排膿し、経過の単純なものはそのまま治癒する。せつの場合は、かなり深部の炎症であるために各動物とも慢性の経過をとることが多いが、特に広範囲な場合とか潰瘍を形成する場合以外は、おおむね良好な予後を期待できます。
まず第一は原因を除去することです。
次に患部の毛を刈り、ヘキサクロロフェン(G-11)とぬるま湯で洗浄し、時に温湿布を数回行う。刺激を避けるように努力する。
コルチコステロイドまたはプレドニゾロンの全身的投与(2.5~10mgを1日2回経口的に)、ペニシリン、ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリンまたはクロラムフェニコールなどの抗生物質の全身的投与、またはパナログのような抗生物質-コルチコステロイド合剤の軟膏などを塗布する。
蜂窠織炎
主として皮下結合織に発生するびまん性化膿性炎を蜂窩織炎といいます。
レンサ球菌、ブドウ球菌が多く、その他一般化膿菌の感染による。
化膿がびまん性でありながら、比較的限局している場合は限局性蜂窩織炎local phlegmonといい、化膿が著しく蔓延性の場合は蔓延性蜂窩織炎diffuse phlegmonという。
限局性蜂窩織炎では、表在性の場合は、患部に熱痛があり、腫脹が認められ、皮膚はやや厚く、皮下はやや硬く感じられますが、病機が進行するに従い、化膿が一か所に集まる傾向があるので、この時期には外見的にも次第に病変部と健康部の区別が明らかとなり、ついには膿瘍を形成することが多い。
深在性の限局性蜂窩織炎の場合は、初期には疼痛のみがあらわれ、次第に表在性蜂窩織炎と類似した症状を現すようになる。この際深部で化膿性、壊死性の反応をおこせば血管周囲炎、リンパ腺炎、リンパ管炎などをおこして治癒機転が遅延します。
蔓延性蜂窩織炎の場合は、ごく初期は限局性蜂窩織炎と同様な症状を呈しますが、半日または数日のうちに病変が広く四囲に蔓延し、広範な腫脹と機能障害のほか、多くは全身症状を表す。
皮下織の腫脹部は炎症性浸潤のため、一般にやや硬く弾力を失い、時として浮腫様を呈する。本病の経過は、治療の適否や生体の抵抗力の如何などによってまちまちですが、炎症が腐敗性に進行する時は、分解生産された毒物の吸収によってとくにはげしい全身症状が現れ、時には中毒によって死亡します。
治療
蜂窩織炎の治療は、切開と化学療法とを原則とします。一般に蜂窩織炎の進行が認められる場合は、膿瘍形成がおこっていない場合にも、また限局性、蔓延性を問わず、すみやかに切開する必要がある。
切開は原則として腫脹部の下部と健康部にかけて大きく行うのが良い。この際、表在性蜂窩織炎であれば、皮膚又は皮下織のみで良いが、深在性の場合は時に応じて筋膜、筋間などを切開する必要があります。
切開後は洗浄、化学療法、排液、排膿を行います。全身症状のはげしい場合には、全身的化学療法のほか、解毒その他の対症療法をほどこす必要があります。
また一般に関節周囲、咽喉頭部などに発した蜂窩織炎は、治療後も機能障害をのこすことが多く、家畜では予後が悪い。牛に多発する趾間腐爛では、趾間の軟部組織に壊死とともに重度の蜂窩織炎が発生し、しばしば深部の組織にも蔓延するので、徹底的な排液、排膿および化学療法が必要とされています。
