眼球突出および眼球脱臼(または眼球脱出)exophthalmos and luxatio bulbi or prolapse of the eyeball
眼球突出とは眼球が前方に転位して、異常な突出状態を呈するもので、さらに程度が大となり、赤道部以上が瞼裂外に脱出したものを眼球脱臼または脱出という。
原因:眼窩骨折、眼窩内の出血・膿瘍・腫瘍、脳腫瘍・出血、頸部の強い圧迫(牛、馬が頸環で強く締められる、犬が兎の罠にかかる、頸部の腫瘍)、その他努責、呼吸困難も眼球突出の原因となる。
バセドウ病Basedow’s disease, exophthalmic goitreは地方によりごく稀に見られる(子羊)。
眼球の脱臼は外傷性に発することが多い(たとえば小型犬が頭を大型犬にくわえられる、大型犬が小型犬の首すじをくわえてふり回す)。
治療法:原因の明らかな眼球突出はなるべくすみやかに(数時間以内)整復して、脱臼への移行(犬では前肢の掻爬によっておこる)を防ぐ。
流動パラフィンに浸漬した綿球を眼にあてがいつつ圧迫し、やむをえない時はその上を被うように眼瞼を縫着する。48時間以内に正常位に復さず、かつ角膜が乾燥・混濁した場合には、眼球摘出術enucleationを行う。
眼球振盪(nystagmus)
眼球が不随意的に振子様あるいは衝動性、旋回性の運動をするもので、普通は両眼におこる。これは次のような場合に観察されます。
②ジステンパーに継発し、あるいは大脳、小脳障害、また特に前庭神経麻痺に随伴する運動亢進【症】hyperkinesis(舞踏病chorea)の後
③乳熱および低マグネシウム血症
④クロロホルム、抱水クロラール麻酔
全眼球炎 panophthalmia(panophthalmitis)
眼球全般にわたる化膿性炎をいう。
原因:角膜、強膜の外傷、手術創、角膜潰瘍、癒着白斑などから化膿菌が侵入し、あるいは全身感染病の転移によっておこる。
症状:激烈な疼痛、羞明、流涙、眼瞼の腫脹、膿様分泌物、眼球突出をきたし、失明し、眼球萎縮が後にのこる。深い透創の場合には24~48時間以内に眼球全体が破壊される。全身症状を伴う。
治療法:ごく早期ならばペニシリン軟膏を塗擦する。敗血症の継発を顧慮し、眼球摘出を行うことが多い。
交感性眼炎(sympathetic ophthalmia)
交感性眼炎とは、一方の眼球に透創を受け、通常毛様体、まれにその他のぶどう膜が比較的多量に破壊された時、受傷後1ヶ月前後の時期に、両眼に急性びまん性ぶどう膜炎のおこるものをいい、人では少なくない。
犬のウイルス感染症、馬の月盲症の際には本症を疑うような発病をみることがありますが、はたして本症であるか、もしくは全身的な感染によるものであるかは疑問とされる。
混晴虫症(setariasis of the eye)
本邦にしばしば見られますが、欧米にははなはだ少ない。
原因:馬の前房中にSetaria digitata(時にS.epuina)の幼虫が迷入遊泳するもので、通常1~2匹ですが、時に数匹以上見ることもある。
虫体は前房、後房を回遊するが、かならずしもつねに発見容易とは限らない。犬においてもDirofilariaの幼虫が血行中から前房に迷入することがある。
症状:角膜白濁、羞明、流涙などによって気づくか、時には虫体をさきに見つけることもある。放置すればさまざまの眼症状を発し、失明に至ることがあります。
治療法:角膜に白濁のあるものはまずこれに対する吸収の処置をほどこす。次いで虫体の摘出を行う。すなわち角膜麻酔後、角膜穿刺を行って、房水の流出と同時に虫体を排出させる。
角膜穿刺による虹彩出血に対してはヨードカリ湿布、アトロピン点眼を行う。薬物療法としては、従来アンチモン剤、ヨードカリ20~100ml静注などが行われている。
眼虫症(thelaziasis)
牛と犬の結膜嚢に眼虫が寄生して結膜炎の原因になっていることがある。本邦の牛にはロデシア眼虫Thelazia rhodesi、犬(稀に猫、人)には東洋眼虫Thelazia callipaedaが寄生する。
虫体を発見したら、局所麻酔を施したのち虫体を摘出する。
