心疾患の主な検査
(ⅰ)血液循環時間blood circulation timeの測定:犬でエーテル法がしばしば用いられる。エーテル0.1mlを前腕頭静脈にすみやかに注入し、呼吸にエーテル臭が現れるまでの時間を測定する。
これを腕肺時間といい、正常犬(体重10kg)では、3.0~6.0秒、平均4.2秒です。人ではデコラン法やアリナミン法も用いられています。
(ⅱ)心電図electrocardiography(ECG):心電図は、従来、心臓の肥大や拡張および負荷などの状態を明らかにするために用いられていましたが、近年、各家畜における心電図学的研究が進み、心疾患の種類によっては、かなり診断的価値が高くなってきた。
心臓外科における心電図は疾患の診断上きわめて重要ですが、また手術中のモニターとしてあるいは術後における手術の影響や効果を知るためにさかんに用いられている。
なお、心臓の立体的観察のためにベクトル心電図が用いられることがあります。
(ⅲ)心音図phonocardiography(PCG)心音図は、心音と心雑音を電気的に曲線に表す方法で、心疾患の診断上きわめて重要なものです。
聴診で診断が困難な心雑音でも、その発生時期や形、性状、強さおよび持続時間などについて容易に知ることができる。また心音図は、手術中や術後の経過などを観察する上に役立つので、心電図と同時記録をすることが必要です。
(ⅳ)X線検査法:心疾患における胸部のX線検査は、診断上きわめて重要な意義があり、犬、猫の場合に多く用いられています。
イ)単純撮影:心臓各部や大血管の像を知るために、動物を保定あるいは鎮静や麻酔下で、背腹方向、側面および斜位の方向で撮影が行われる。
心陰影から、心臓の大きさや各部の拡大の状況を観察し、同時に心肺比の計測も必要です。また肺野の血管陰影は、次のことを意味する。すなわち、右心系や肺動脈に狭窄があると肺血流量が少なくなるため、肺野が明るくなる。
これに反して左→右短絡のある疾患では、肺血流量が増加するので、肺野は暗くなり、また左心系の狭窄で、血流障害のある場合も同様の傾向を示す。
ロ)心臓血管造影法angiocardiography(ACG):X線撮影法および記録装置の進歩により、心臓の各部や大血管の造影が可能となりました。犬、猫の診療において多く用いられている本法には次のような方法があります。
(a)経静脈法:頸静脈、前腕静脈、伏在静脈などから造影剤(ヨード化合物)を急速に注入する方法で、大静脈、右心房・室、肺動脈が観察される。
(b)選択的造影法:頸静脈などから、血管カテーテルを心臓の所要の部分まで挿入して、造影剤を直接心腔内に注入する方法で、血管カテーテル法ともいう。
経静脈法にくらべて操作が複雑(鎮静または麻酔を必要とすることが多い)ですが、部位的に濃厚な像が得られるので、診断上の価値が高い。
(c)逆行性大動脈撮影法:大腿動脈や頸動脈などから、血管カテーテルを血流に対して逆行性に大動脈から左心室に挿入し、造影剤を急速に注入して撮影する。
なお、撮影は前後および左右の両方向から行う。一般に単独撮影または連続撮影が用いられるが、近年では映画やビデオテープに記録して、血行動態や異常所見の詳細な観察が行われている。
(d)心臓カテーテル法cardiac catheterization:一般に右心カテーテル法が多く用いられています。犬および猫の心臓病の診断に応用され、ときに馬や牛にも使われる。
血管カテーテルを頸静脈や前腕静脈あるいは大腿静脈や伏在静脈からX線透視下で右心房・室、肺動脈に向かい、徐徐に挿入する。この場合、カテーテルが短絡路を通じて左心系にはいり、これによって卵円孔開存症や心房または心室の中隔欠損症が診断されます。
またカテーテルの挿入位置を定めて、たとえば心内圧や肺動脈圧および酸素含有量の測定ならびに心拍出量や左右心臓の短絡量(心房や室の中隔欠損など)を測定する。
(e)超音波検査法ultrasound-cardiography(UCG):超音波検査法は、現在人医領域において、心電図や心音図とともに、心疾患の診断、とくに心機能の判定に用いられています。
検査には超音波多用途診断装置が使用され、犬における測定部位は胸骨左縁第3~4肋間、右縁第4~5肋間で、心電図も同時に表示し、撮影記録できる。
超音波ビームを心臓方向に向け、それによって得られたエコー図から、心臓各部の形状や動態を解析するもので僧帽弁などの運動状態や左右心室壁・左心房壁・心室中隔・大動脈壁の厚さおよび大動脈の内外径と左心室内径などの心臓各部の計測が可能であるとされています。

