腹膜炎(peritonitis)
腹膜は、種々の刺激を受け、吸収・滲出・癒着の機能が異常に亢進すれば腹膜炎となります。
腹膜炎は各種に分類される。急性と慢性(経過により)、限局性腹膜炎localized peritonitis(腹腔内膿瘍はこれに含まれる)とびまん性腹膜炎diffuse peritonitis(腹腔全般におよぶものを汎発生腹膜炎general peritonitisという)、原発性と継発性、乾性と滲出性(湿性)、滲出性をさらに漿液性、線維素性、漿液線維素性、出血性、化膿(腐膿)性など、また細菌感染の有無により無菌性と感染性などです。
原因
(ⅰ)腹壁の透創・手術創よりの感染:透創、手術創により外界から細菌が侵入して発生する。手術の際、無菌的配慮を怠れば術者の手指、器具、縫合材料を媒介として感染がおきる。
(ⅱ)腹腔臓器の穿孔・破裂による感染:腹壁透創時の胃腸の穿孔、消化管の潰瘍の穿孔、胃腸内異物による消化管壁の穿孔、腹壁挫傷時の胃腸壁の破裂、直腸検査時の穿孔、胃腸手術時の縫合不全などによる内容漏出などは腹膜炎を発生させる。
その他の臓器の穿孔、破裂においても、内容が汚染している場合は感染がおこる。
(ⅲ)腹腔内臓器の炎症の波及:胃腸炎あるいは腸閉塞部などからの感染(経壁性腹膜炎trans-parietal peritonitis)。なお腹腔内腫瘍も腹膜炎の原因となる。
(ⅳ)腹壁の炎症の波及:腹壁挫傷後の炎症、腹壁膿瘍などからも腹膜炎は発生しますが、腹膜の細菌に対する抵抗力はかなり強いので、穿孔性にくらべてその発生は少ない。
(ⅴ)腹膜の非細菌性刺激:手術操作時の機械的損傷、消毒薬などによる薬物刺激、血液・胆汁など臓器の内容物の刺激によって腹膜は炎症をおこすが、重篤となることは少ない。
しかし後に癒着を後遺しやすい。また細菌感染が関与すれば、化膿性炎に移行する。
(ⅵ)転移によるもの:遠隔感染巣よりの血行、リンパ管を経て転移性腹膜炎peritonitis meta-staticaがおこる。膿毒症、敗血症でしばしばみられる。
症状
感染の有無およびその程度、腹膜の刺激・損傷の程度により左右される。
それらの程度が大きい場合は、急性び慢性になり、小さい時は慢性限局性となるが、かならずしも一概にはいえない。
また動物の種類により感受性は異なり、馬がもっとも鋭敏であり、羊・山羊・牛がこれに次ぎ、猫・犬はその度少なく、豚・家禽がこれにつづく。
牛に多発する創傷性第二胃腹膜炎の場合は多くは限局性です。
主な症状は、発熱、頻脈、呼吸数増加、元気・食欲減退などの全身炎症症状と、腹痛、圧痛、腹壁緊張・膨満などであって、急性び慢性では著しく、慢性・限局性では軽減する。
多くは癒着が後遺し、そのためその臓器の機能障害がのこることがあります。また感染性(化膿性)では白血球増加、好中球増加など白血球系の変化が現れる。
治療法:早期発見、早期治療が大切であり、初期に徹底的化学療法を行う。また対症療法にも重点をおく。滲出液が多い場合には、穿腹術により内容の除去、腹腔内洗滌を行う。
時には開腹により腹腔内を清浄にする。
しかし過度に腹膜を刺激しないよう注意が必要です。癒着は、それにより機能障害があれば開腹して剥離しなければなりませんが、再癒着しやすい。

