骨折の治癒は、本質的には局所性反応です。
それは、形態的には骨折片の間隙が骨組織によって埋められ、また機能的には骨折部に負重能力のある構造が再建されることによって完了します。
それに必要な条件は、十分な血液の供給、骨片の正確な整復と堅固な固定、および早期の歩行運動です。したがって、局所の血管の著しい損傷、整復と固定の不良、骨折の間隙に介在する軟部組織、および感染は、骨の治癒に有害です。
骨に分布する血管の反応
骨折がおこると、骨に分布する血管が多かれ少なかれ損傷をうけて、骨に対する血液供給が阻害されます。成熟した動物の長骨には、栄養動脈、骨幹端-骨端動脈および骨膜動脈が分布しています。
3者は骨の内部で互いに吻合して血管網を構成しており、一部の血管に断裂がおこっても骨の血液供給が途絶しない仕組みになっています。
これに対して若い成長期の骨では、骨幹端動脈と骨端動脈の間に骨端板の関門が存在して、両者の間に吻合がないため、事情はやや異なります。
骨皮質の外側1/3の層には骨膜動脈から、また内側2/3の層には栄養動脈から、血液が供給されます。海綿質は皮質にくらべて血管の分布が密で、血液の供給量が多い。
骨折の際に栄養動脈の血液供給が途絶すると、骨膜の血管が刺激されて拡張と増殖がおこり、また骨幹端-骨端動脈にも増殖と吻合がおこって、血液供給を担当する。
しかし成長期には骨膜の営む骨の付加成長(appositional growth)がさかんで、骨膜が血管に富むため、骨膜動脈が栄養動脈の役割を十分に代償する。
栄養動脈の破壊は皮質の内側2/3の層の壊死を招きますが、これに対しては、骨膜動脈の枝が骨髄腔まで貫通してその部分の血液供給を再開するとともに、死んだ骨組織を吸収し、また骨を新生します。
またその際の骨の癒合は、主として外仮骨の形成によって営まれます。
骨膜の血管からの血液供給が途絶するときは、栄養動脈および骨幹端-骨端動脈によって代償されます。骨膜が骨から剥離すると、骨の付加成長が妨げられ、また虚血がおこって皮質の外1/3は壊死に陥りますが、この部分には栄養動脈から新たに血管が貫通してきて壊死組織を吸収します。
この場合の骨の癒合は主に内仮骨の形成によりますが、栄養動脈のみが破壊されて外仮骨が形成される場合にくらべると、癒合が遅れる。
栄養動脈と骨膜動脈の両者がともに破壊された場合には、骨幹端-骨端動脈の増殖と吻合によって血液供給が維持されます。
骨の癒合は内仮骨の形成によりますが、この場合は骨折の遅延治癒または癒合欠如がおこりやすい。特に成長期の骨では、骨幹端動脈による代償が不十分で、骨髄と骨の虚血性壊死の発生が著しい。
不安定型の骨折(unstable fractureたとえば断端が平滑な横骨折、斜骨折、螺旋骨折、粉砕骨折)の場合には、軟部組織からの血液供給はあまり重要な役割をはたすことができません。
特に、骨折の際あるいは治療(たとえば髄内釘の挿入)によって骨髄の血管が著しく損傷されるときは、骨折の治癒にはほとんど役立たない。
これに対して安定型の骨折(stable fracture)たとえば生木骨折、断端が鋸歯状の横骨折、嵌入骨折では、骨髄の血管と内仮骨の意義はもっと大きい。

