骨接合術による内固定法(osteosynthesis)
内固定法(骨接合術)は次のような場合に採用されます。
①畜患の体格、体重、気質、習性などから、保存的治療法では、骨片の固定を長期間安定して維持することが難しいと判断される時、②非観血的な整復が難しい時、たとえば骨片の転位が著しい時、粉砕骨折、骨折線が関節面におよんでいる関節骨折、③解剖学的に正確な整復と強固な固定が特に必要な時、たとえば大腿骨髄の骨折、関節骨折。
骨接合術には、種々の装置や器具が、個々の症例に応じて、単独あるいは合併して使用されます。髄内釘、骨ネジ、骨プレート、骨縫合ワイヤー。
これらの装置や器具は、長期間体内に留置されるので、その間に錆、磁性あるいは電流が発生して、生体組織を刺激することがない材料で作られる必要があります。
現在は、モリブデン18-8ステンレススチールまたはバイタリウム(Vitallium)が広く使われています。また異質の金属材料の併用は避けなければいけません。
髄内釘による固定
骨髄腔に髄内釘(intramedullary pin or nail)を打ち込んで骨片を固定する術式(髄内釘固定法intramedullary pinning or nailing)は、小動物の長骨の骨折の接合術として広く普及しているほか、寛骨、下顎骨などの骨折にも応用されます。
また大動物の四肢の骨折に対しても用いられています。
本法は術式が比較的簡単で、非開放性に整復できれば術部の露出が少なくてすみ、骨の治癒経過の検査がやりやすい。また治癒後に髄内釘を除去して回収すれば経済的でもあります。
骨折線が鋸歯状の横骨折、同じく鋸歯状で、斜面が短い斜骨折など、骨片の動きが少ない安定型の骨折に、特に適しています。
しかし、不安定型の骨折、たとえば骨折面が平滑な横骨折、骨折面が平滑で、かつ斜面が長い斜骨折または螺旋骨折は、骨片の旋回転位や騎乗が防止しがたいために、かならずしも良い適応症ではなく、また粉砕骨折では、多数の骨片の固定が不可能なために用いられない。
髄内釘として使用されるピンには、いろいろの種類があります。
断面が円形のSteinmannピン、同じく細いKirschnerワイヤー、断面がV字形・クローバー形・菱形のKüntscher釘、屈撓性があり、一端が鈎型に曲がったRushピン。これらには、それぞれ種々の太さと長さがあります。
骨片の動きが少ない安定型の骨折ではSteinmannピン、あるいは細い骨ではKirschnerワイヤーを挿入し、その先端を骨の内壁につき刺すことによって、他に補助的な固定法を併用しなくても、堅固な固定が得られます。
なるべく太くて丈夫なピンを使用することがのぞましい。
できれば、骨折部の骨髄腔の内径とほぼ同じ太さのピンを選ぶべきですが、骨の彎曲、骨髄腔の断面の形、骨折のタイプなどによって、かならずしもその通りにはできません。
安定型の骨折では、断面が円形のピンを使っても、鋸歯状の骨折線や筋の収縮によって、骨片の旋回が防げます。一般にV字形、クローバー形、菱形のKüntscher釘を使用すると、釘の稜線が骨の内面にくいこんで、旋回防止効果が高まる。
Rushピンはふつう2本挿入しますが、刺入部と骨折部と先端の3点で骨片を固定します。
髄内釘の挿入は、開放式または非開放式に行われます。SteinmannピンとKirschnerワイヤーは、骨折部の触診と骨片の整復が容易な、発生後間もない安定型の骨折には、ふつう非開放式に、骨の一端から挿入します。
しかし多くの場合に、開放式挿入が行われています。その場合には、骨の近位端から挿入することがあり、また骨の断端からいったん逆行性に挿入した後、順行性に挿入することもあります。Rushピンは骨の一端から挿入します。
髄内釘のみで十分な骨片の固定が得られない時には、ワイヤーによる全周または半周縫合、ハーフピン副子法またはフルピン副子法、圧着ネジ、複数のピンの挿入などの手段を併用します。
以上の髄内釘のほか、開放式に骨髄腔内に挿入するJonas副子とLeightonシャトルピンshuttle pinがあります。Jonas副子は、一方の骨片の内腔に挿入した外筒から、径の細いピンがバネ仕掛けで突出し、他方の骨片内に進入して、両骨片を固定します。
またLeightonシャトルピンは、織機で緯糸を通すのに使う梭の形をした金属片の中央にあけた穴に、ワイヤーまたは絹糸を通しておき、いったん全長を長いほうの骨片内腔に挿入したのち、両骨片を整復し、ワイヤーまたは絹糸を強く牽引して他側の骨片内に進入させるものです。
これら二つの考案は、小型の動物の橈骨、尺骨、脛骨、または骨プレートが適用できない短小な骨の骨折に使われますが、固定力はあまり強くない。

