顎関節炎は馬、犬にまれに見られます。打撲、外傷、褥瘡などより発し、また付近のフレグモーネ、腺疫および膿毒症などの転移によって発します。
高度の咀嚼困難、他動的開口時の疼痛、関節付近の硬固な腫脹、捻髪音を発し、牙関緊急trismusの症状を示すことがあります。
慢性症では、咀嚼筋の高度の萎縮、関節癒着などがみとめられます。
治療法として、局所的に皮膚刺激剤の塗擦、焼烙などを試みますが、予後は一般に不良です。
肩関節炎
肩関節は厚く広い筋肉におおわれているため、この部の関節炎の症状の詳細はつかみがたく、肩跛行として症候的名称で取り扱われます。
肩跛行は一般に懸跛を主としますが、時には混跛・支跛を呈し、原因は多岐にわたっています。したがって、肩関節部の疾患(挫傷、捻挫、不完全脱臼)、筋系統の疾患(上腕三頭筋・上腕二頭筋などの外傷性、およびリウマチ性筋炎)、粘液嚢炎(結節間粘液嚢炎)、骨の疾患(主に骨折、まれには骨壊死・腫瘍)、神経の疾患(腕神経叢、肩胛上神経および橈骨神経の麻痺)、血管の疾患(動脈の栓塞)、リンパ節の疾患(腋窩リンパ節などの炎症、腫瘍)との類症鑑別が必要となります。
主として馬に発しますが、犬にも発生することがあります。
原因
関節部の挫傷、関節の捻挫・激伸に継発して、急性漿液性関節炎が発生します。
慢性(漿液性)関節炎は多くは急性症より移行しますが、ときには日常過激な労働に服しているもの、ことに不正肢勢、肩の角度不良などの素因を有するものに発することがあります。
化膿性関節炎は、蹴傷や関節穿通創などから染毒して発します。
また突発性のものとして、線維性骨栄養障害、リウマチ、クル病によるものがあり、まれに初生畜において、血行性感染による膿毒敗血症の際に肩関節炎をみることがあります。
症状
急性症は運動中突然に発生することがあります。
休息中には患肢を少しく前方に提出し、運歩に際しては、懸跛を呈することが多く、高度の場合は、往々混跛を示します。
跛行は運動とともに憎悪し、肩関節を他動的に動かす(屈曲、伸展、内転、外転)ときは著しい疼痛を示し、また肩関節周囲には増温、腫脹および圧痛があります。
この急性症が漿液性か化膿性かの判定は、発病の原因、症状の軽重より行われますが、困難な場合もあります。
創孔より膿汁の排出を認める時、あるいは血液検査所見が化膿を示す時は化膿性と診断されます。慢性症では、局所の増温、腫脹を欠く。
跛行や圧痛はのこることがありますが、急性症のように明瞭でなく、肩跛行として診断されることが多い。
経過の長い時は、肩の筋肉が萎縮し、関節が突出しているように見え、また変形性関節症がおこって変形し、時には関節強直を後遺します。
慢性症においても、初期漿液性であったか、化膿性であったかの判定が困難な場合がおおい。
予後
急性漿液性炎は一般に予後は良好ですが、陳旧となり、かつ変形性となったもの、あるいは化膿性のものは予後不良です。
治療法
急性症は急性漿液性関節炎の治療法に準じ、また化膿性は化膿性関節炎の治療に準じて行います。慢性症は、詳細が不明の場合が多く、治療に苦しむことが多い。
局所に強力な皮膚刺激剤を塗擦します。効果不十分な時は点状焼烙を行い、前記刺激剤を併用します。その他肩跛行の治療法に準じて行います。

