無気門に属するダニは小形で体長0.2~0.7mm、軟らかく半透明をなし、特別な気門はなく気管も不明瞭か、あるいはない。
口器は普通「かむ型」をしていて鋏角は強大な鋏状になっています。雄には肛門吸盤をもつものがあります。家畜害虫としてはヒゼンダニ類(かいせん虫)と地上や土中に自由生活をしていて条虫の中間宿主となっているササラダニ類があります。
ヒゼンダニ
ヒゼンダニが寄生すると宿主は皮膚病を起こし、その部位は脱毛、痂皮形成、痒みなどを伴います。家畜の泌乳量や増体量は低下して家畜生産性を減退します。
ヒゼンダニは全世界に分布し、馬、牛、犬、豚などに多く寄生し、人にも寄生します。
ヒゼンダニの形態
ヒゼンダニは小さくて円形ないし卵円形をなしています。色は白色または淡褐色で、体の表面には横に無数の横しわ(紋理)があり、また多数の剛毛が生えています。
脚は短くて4対ありますが、前方に2対と後方に2対があります。
脚の先端には1対の太い爪と長い柄のある吸盤を有するものがあります。各種のヒゼンダニはこの吸盤の位置で区別できます。
触肢は小さく鋏角の外側に圧迫されています。
各種ヒゼンダニの形態、習性および害
この属のダニはキュウセンヒゼンダニpsoroptes equi(HERRING,1838)の1種だけといわれています。また各宿主ごとに変種あるいは独立種を認めている人もあります。
体は楕円形で一般に脚は長く、先端に吸盤をもっていますが、雄の第4脚および雌の第3脚には吸盤がない。大きさは他のヒゼンダニに比べて大きく、雄0.5~0.6mm、雌0.6~0.7mmあり、背には棘がない。
雄ダニには生殖吸盤、雌ダニには生殖條があります。また、雌の生殖門は横に長いですが、逆U字形です。
キュウセンヒゼンダニは宿主の体表に寄生し、体表よりリンパ液を吸っています。成ダニは宿主上で交尾をなし、雌は産卵前にさらに脱皮してから産卵します。
全身の皮膚に寄生しますが、おもな寄生部位は馬では長毛部、牛、山羊、羊では肩、頭、肛門周囲、兎は耳殻です。
卵は1~3日で孵化し、幼ダニは5~6日たつと若ダニ、成ダニにまで発育します。
感染発症部位は不正形の脱毛をおこし、水疱や痂皮を形成し、痒みはひどい。重感染のときは栄養不良となり痩せます。
この属にはショクヒヒゼンダニchorioptes bovis(GERLACH,1857)があり、各宿主にはその変種が寄生しています。
大きさは雄0.3mm、雌0.4mmで、体はほぼ円形をなし、雄は1~4脚、雌は1、2、4脚に有柄の吸盤があります。牛の尾根部、四肢、馬、羊、山羊の脚に多く寄生しています。
このダニの鋏角はものをかむのに適していて、宿主の死んだ表皮や皮脂腺の分泌物をたべています。一世代は約3週間でおわりますが、宿主をはなれても4℃のようなかなり低温の状態でも3週間くらい生きています。
C.bovisの卵は3~5日で孵化し、若ダニ期は7~15日かかります。また、成ダニは交尾後約2週間産卵します。症状は一般に軽微で、丘疹、脱毛、痒みを生じます。
ミミヒゼンダニOtodectes cynotis(HERRING,1838)
雄は1~4脚、雌は1、2脚に有柄の吸盤があります。また、第4脚は小さい。
犬、狐の耳殻(外耳道)に寄生し、宿主は首をはげしく振り、外耳炎を起こしてみみだれを流す。
人や家畜に寄生して疥癬という皮膚病を起こすヒゼンダニSarcoptes scabiei DEGEER,1778は、古くから世界中に広く分布していて、これによって起こる皮膚病をScabiesといっています。
戦争、飢饉、地震のような非常事態のとき、人々は身体や衣服の洗浄が悪くなってヒゼンダニの寄生がひどくなることは、歴史をみると数多い症例があります。
馬、牛、犬および豚などに寄生します。各家畜に寄生するヒゼンダニS.scabieiの変種ですが、これらは宿主嗜好性があって、あまり他の家畜に感染しない。
ブタセンコウヒゼンダニS.Scabiei var.suisは豚に、ウマセンコウヒゼンダニS.scabiei equiは馬に、ウシセンコウヒゼンダニS.scabiei bovisは牛に、イヌセンコウヒゼンダニS.cabiei canisは犬に寄生します(馬や犬のヒゼンダニは人にも感染するといわれています)。
ダニの形はほぼ円形をなし、扁平で白色をして、大きさは雌0.3~0.4 x 0.4mmで雄はそれより小さい。体表には棘状突起と紋理があります。
形態はマダニに似ています。しかし、マダニと違う点は気門がなく、口下片には歯はなくて発達していない。また小さな1対の鋏角は鋏状になっています。
触肢は1対あってそれぞれ3節よりなり、顎体部についています。さらに、ヒゼンダニは眼および気管のないのが特徴です。
成ダニは4対の短くずんぐりした脚があり、幼ダニは3対の脚をもっています。4対の脚のうち第1、2脚は体の前半に、第3、4脚は後方にあります。
雌の第1、2脚の末端および雄の第1、2、4脚の末端には吸盤があります。
雌ダニの生殖門は腹面にあって横に長い裂孔をなします。雄ダニの生殖門は腹面の陰茎の先端にあります。また、肛門はいずれも体の末端にあります。
受精している雌ダニは宿主の皮膚内に、24時間で2~3mmの速度でまがりくねった数mmから数cmの長さのトンネルをつくり、このトンネル内に0.15 x 0.1mmの大きさの卵を産みます。
トンネル内は卵とダニの排泄物で灰色を呈します。
雌は4~5日たつと産卵をはじめ、毎日4~5個の卵を産み、合計25~30個産卵すると死にます。卵は4~5日で孵化し、幼ダニは活発に動きまわって、別の場所にトンネルを掘り感染をひろげます。
幼ダニは第1若ダニ、第2若ダニと脱皮しながら発育し、やがて成ダニになります。卵から成ダニになって産卵をはじめるまで2~3週間かかります。
宿主内の雌ダニの寿命は約1ヶ月ですが、ダニは宿主の体をはなれても10日間は生存しているといわれています。
ヒゼンダニの発育は、卵 → 幼ダニ → 第1若ダニ → 第2若ダニ → 成ダニという過程をとりますが、雄ダニは第2若ダニ期がない。
ダニの寄生部位は皮膚のあまり厚くないところ、たとえば胸、肩、指の間などを好み、さらに他の部位および全身におよびます。
たとえば人では指のまた、陰部、臍部、犬では頭頸部、躯幹部、四肢、馬では全身、羊は顔面、山羊・豚では全身とくに眼、耳に寄生します。
症状はダニのせんこう、ならびに毒物の分泌によって、痒みはひどく、発赤、水疱、小結節、痂皮、皮膚肥厚、脱毛、落屑をおこします。また、刺激がひどいのでひっかいたり、他のものに体をこすりつけたりして、細菌の二次感染をおこします。
各家畜のヒゼンダニ寄生頻度の順はおおむね次のようです。
馬‥(センコウ)ヒゼンダニ > キュウセンヒゼンダニ > ショクヒヒゼンダニ
牛‥キュウセンヒゼンダニ > ショクヒヒゼンダニ
豚‥(センコウ)ヒゼンダニ
体はまるく、背面に棘はない。後端には2本の長い剛毛があります。雄の脚の先端にはすべて吸盤がありますが、雌の脚にはまったくない。
形は小さく雄は約0.2mm、雌は約0.4mmあります。おもな種類はトリアシヒゼンダニとニワトリヒゼンダニです。
トリアシヒゼンダニK.mutans(ROBIN et LANGUETIN,1860)はscaley leg miteといい、鶏をはじめその他の鳥類の脚部の鱗皮下に寄生し、痂皮中にトンネルを作ります。
症状が進行すると鶏は歩行不能となって衰弱して死ぬ。
このダニの寄生は着色鶏に多く、白色鶏に少ない。また、平飼いの鶏に多いといわれています。平飼いやバタリー飼育で発生がみられ、ケージ飼育では少ない。
また、年間を通して発生しますが7~8月がピークです。
ニワトリヒゼンダニK.gallinae(RAILLIET,1887)はdepluming miteといわれ、約0.3mmの大きさをなし、翼の先、胸部、腿部の毛根に寄生し、脱毛症となって痒覚ははげしい。鶏、キジ、ガチョウに寄生します。
猫の疥癬で、大きさは雄約0.15mm、雌約0.2mmです。
形および吸盤の形式は(センコウ)ヒゼンダニに似ていますが、このダニの肛門は背部に開口していて、体の背面には短くて鋭い毛を生ずる。
猫、ウサギの頭部、四肢、外陰部などに寄生し、患部の脱毛、湿潤がおこり、痒みははげしく食欲は廃絶します。さらに悪液質におちいって死ぬこともあります。
全世界に分布します。
無気門亜目、ヒゼンダニ団の中にウモウダニがあります。ウモウダニは鳥類の羽毛に寄生するダニです。
鶏にはニワトリウモウダニMeguinia cubitalis、ナガウモウダニSyringophilus bipectinatus、ヒシガタウモウダニPterolichus obtususなど多数のウモウダニが羽毛に寄生します。
ウモウダニは鶏の羽毛や皮膚をたべています。ヒシガタウモウダニが多数寄生すると羽毛は汚れた淡褐色にみえます。
本邦の鶏にも寄生していると思われますが、実態は不明です。
ヒゼンダニの駆除
ヒゼンダニは人や家畜、鶏などに寄生し、家畜の多頭羽飼育においてはその被害も大きい。症状としては、一般的に痒みがひどく、そのストレスにより家畜は生産性を減退します。
感染は患畜と接触によって行われることが多い。
しかし、このダニは宿主の体をはなれてもかなり長く生存しているので、患畜のいる畜舎内の床や敷ワラには落下しているダニがいると思ってよいでしょう。
さらに、家畜に症状が認められたころになると同一群、同一畜舎内の家畜にもかなり感染が広がっていると考えられます。
ヒゼンダニの駆除はなかなか困難で、まず患畜を隔離し、畜舎の敷ワラなどを焼却するか、殺虫剤をじゅうぶん散布します。
また、家畜の管理器具、畜体にふれるようなものは消毒、殺虫します。
患畜に対しては薬浴、または、殺虫剤を皮膚に塗布するか、散布をくりかえします。このような薬剤の外用と同時に内服も併用することが望ましい。




