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牛蹄の疾患 ~ 蹄葉炎 laminitis(び漫性無菌性蹄皮炎pododermatitis aseptica diffusa, Rehe)

5.0
蹄葉炎 蹄および爪の疾患

 
 
蹄皮の血液循環の異常を主徴とする無菌性の炎症で、病型には急性acute、亜急性subacuteおよび慢性chronicがあります。
 
 
複数の肢の蹄に発生することがおおい。
 
 
急性型、散発性、元気沈衰し結膜が充血しますが、発熱するとは限りません。前肢、後肢、時には4肢の蹄に発生します。
 
 
四肢強拘で、ときどき前肢の交差肢勢、後肢の前踏肢勢をとります。背を彎曲します。
 
 
起臥困難、また立っているにも歩くことにも苦痛があります。跛行が顕著。蹄壁の熱感は馬の場合ほど著しくありません。
 
 
蹄底を削蹄すると発病2~3日後には灰黄色(時には血様色)、軟化の領域が認められます。蹄形には変化がありません。飛節の直上で静脈の怒張を見ることがあります。
 
 
亜急性型、急性症とともに若い雌牛の分娩前後に発生することが多く、集団飼育の牛群では多発することがあります。
 
 
後肢外蹄にしばしば認められます。
 
 
体がこわばり歩様は強拘ですが、跛行は必ずしも明瞭ではありません。蹄底と白帯にかなり広い変色域または出血が見られます。
 
 
蹄の変形は著しくはありませんが、長引くと変形が起こります。蹄底蹄球接合部の軸側寄りに蹄底潰瘍が継発することがあります。
 
 
慢性型、異常な姿勢と強拘な歩様を呈することもありますが跛行は明らかではありません。蹄が過長で変形が著明(蹄尖が上向き背壁が凹彎、蹄底が膨隆)、異常な蹄輪、蹄底の角質に著しい出血ないし黄変部、白帯の拡張と欠損、蹄骨の先端が下向きに回転し、しばしば蹄底潰瘍が生じます。
 
 
集団飼育の牛群に多発することがあります。
 
 
本邦でも1970年から数年にわたって集団肥育の幼牛に多数発生しました(ロボット病またはツッパリ病といわれた。肥育用配合飼料の多給が原因。)。
 
 
急性症から移行するものと、そのような前段階の症状が不鮮明で検知されない場合とがあります(潜在性または非臨床型subclinical)。
 
 
一般に分娩回数を重ねると発病する機会がふえ、中には発症を反復するものもあると考えられています。
 
 

蹄葉炎の病因

 
 
蹄葉炎の起病因子に関する研究はスウェーデンのNilsson(1963)の詳細な報告が端緒となり、それ以後多くの議論がありますが、未だ必ずしも明確ではありません。
 
 
しかし本病がルーメンアシドーシスが発生する消化障害と密接に関連していることについては一般に見解が一致しています。
 
 
したがって粗飼料の著しい給与不足と易消化炭水化物を多量に含む濃厚飼料の多給とが合併することは有力な発病要因の1つと考えられます。
 
 
すなわちその際には多量の乳酸、ヒスタミンあるいはエンドトキシンが産生、吸収され、それらが蹄内の血液循環障害をひきおこします。
 
 
また発病が時期的に分娩と密に関連していることから、分娩直前から泌乳最盛期にかけて行われる濃厚飼料の多給(steaming-upおよびlead feeding)も上記の消化障害を助長すると考えられます。
 
 
難産、胎膜停滞、およびそれらに継発する子宮の重度の炎症、重篤な乳房炎および後肢の浮腫も、しばしば本病と密に関連することが指摘されています。
 
 
また慢性型および亜急性型では、後肢の外蹄が内蹄に比して一般に高く、体重負担時の衝撃が強いことおよび硬い床面からの逆圧も影響すると考えられています。
 
 
以上のように牛の蹄葉炎は必ずしも単一の原因によって成立する病気ではなく、多くの要因が重なって起こる多因子性の疾病multifactorial diseaseの1つと考えられます。
 
 

蹄葉炎の病理

 
 
有毒物質の感作をうけて蹄の内部の血管系に異常が起こります。
 
 
先ず毛細血管に浮腫、血栓形成、出血などが生じ、あるいはまた動脈-静脈の短絡(A-V shunt)が起こって、蹄鞘内の血液循環が著しく障害されます。
 
 
その結果、血清の滲出、出血、血液凝固が著しく、一方また一部には虚血部分も発生します。慢性型では角質の生産異常が起こります。
 
 

蹄葉炎の転帰

 
 
急性症は適切な治療による効果が現れない限りは慢性型に移行し、蹄の変形が起こります。
 
 
亜急性型は次第に慢性型に移行します。
 
 
慢性型は蹄の変形が著しい。また蹄底潰瘍、白帯病、二重蹄底、傾蹄が生じます。
 
 

鑑別診断

 

蹄底挫傷、白帯病、蹄底穿孔

 
 

蹄葉炎の治療

 
 

急性症

 

コルチコステロイドの全身的投与(妊娠中は不可)、利尿薬投与、瀉血(成牛で3~5ℓ)。
 
強制的に軟らかい地面を歩かせて蹄の血液循環の改善と浮腫の減退を図ります。起立を好まない牛でも指(趾)神経をブロックして無理にでも歩かせます。
 
病因と考えられる事項を排除します。
 
濃厚飼料の給与を停止します。

 
 

亜急性症

 

急性症と同様に処置します。

 
 

慢性症

 

削蹄を繰り返して次第に正形に近づける。

 
 

蹄葉炎の予防

 
 
分娩前の濃厚飼料の多給(steaming-up)をやめ、濃厚飼料の給与量を0~2kg/日とします。
 
 
分娩当日は2kgを2回給与、以後は目標とする最高乳量に達する日まで徐々に日量を0.5kgずつふやしますが、最高給与量に達する日は分娩後3~4週間より遅らせて6週後を目標にします。
 
 
その間粗飼料は乾物量の35%以上とし、さらに線維の粗大な粗飼料、例えば長茎の粗飼料や予乾したサイレージを与えます。
 
 
唾液の分泌を促して胃内のpHを調整するためヨード、塊状のミネラル、ルーサンナッツを摂取させます。1% NaHCO₃を添加します。
 
 
分娩前に削蹄を実施して蹄形を矯正します。
 
 
また、分娩前の数週間はなるべく十分に運動させます。

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